スピード感!

「それにしても暖かいな」と空調のものではない別の暖気に思わず振り返ると、オレンジ色が肩越しに見えました。
正体は薪ストーブ。そうと分かると、ガラス越しに揺らめく炎に吸い寄せられて、目線をはずしても、すぐにストーブに戻っていきます。薪が燃えて崩れたり、パチパチ爆ぜる様子は、いくらでも見飽きることがなく、改めて暖を取るのに視覚の力も大きいものだと実感。

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『やきものに捧げて 小山冨士夫展』
小山冨士夫の名前は聞いたことがあっても、これだけの作品をまとまって見ることのできる機会は、なかなかないのではないでしょうか。立春は過ぎたものの、寒風の向かい風にカメのようにコートの中に首を縮める日々ですが、前述の薪ストーブのように、目から暖かさを感じていただきたい、まさにそんな展示となっております。


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店内をぐるりと見回しても、茶碗・湯呑・酒器・壷・花瓶・書・・・等、作品の多さがお分かりになるかと思います。二週にわたり展示しておりますので、どうぞお出かけ下さいませ。



今週の花



「 アブラチャン」とは、また随分と可愛らしい名前ですが、クスノキ科に属し木自体に油分が大変含まれていて、乾燥させなくとも、よく燃えるのだそうです。

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蕾が細い枝にびっしり付いていますが、黄色い小花がほころび始めています。

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深い赤の椿は「黒椿」。白磁の花瓶に良く映えます。




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木瓜の花は鋭い棘を持っていて、柔らかな花と一枝に面白いコントラストとなっています。



小山冨士夫先生は作陶において、スピード感を大切にされていたとのことですが、今回の展示で、それは書においても大いに窺い知れるところです。
何点かの先生の作品は、勢い余って紙からはみ出さんばかりの、いえ はみ出した筆の運びが。
ある作品は筆から滴り落ちた墨の跡。いずれせよ、思いを口に出すより、筆を走らせた方が速い・・・と言わんばかりの筆致。どの字を拝見しても、たぎった坩堝からあふれ出たと言おうか。止められない勢いが否が応でも飛び出してくるのです。

小学生の頃の冬休みの宿題に必ず出された書初め。自分なりに一番出来ばえのいいのを提出しようと張り切って練習をしたものでした。ですが、何度も書いていくうちに、さっきのは、この字が良かったけど、今回のは下の字が上手に書けている。これは全体のバランスはいいけれど、字が小さくて元気がないな。などと、回数を重ねるごとに、勢いが無くなって、字はきれいになっていっても、どこか嵩高になったようだと子供心に気付いたものでした。


経験値が増えることは、生きていく上でも護符となり欠くべからざる重要なこと。しかしながら、時として度を越したブレーキパッドになっているのではないか。先生の字を眺めながら、少し気持ちのブレーキを緩めてスピードを出す勇気も必要だと感じました。




(藤)



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