暮れなずむ時

「暑い、暑い」が「熱い、熱い」と誤変換ではなく正しい変換と誰もが賛成してくれるであろう今年の夏。動物園の飼育員の方々が動物たちに暑さ対策を早い時期から考えて工夫していたようだ。ある動物園ではキリンやシマウマがしゃれた六角形の屋根の下で休んでいた(涼んでいた)。ゾウには凍らせたリンゴ、スイカ、パインを、サルには野菜や果物を中に入れた氷をあげたり、ミストや水をかけたり、暑さに弱い動物には扇風機やエアコンも使って守っていると聞いた。飼育員の皆さんの努力で、みんな乗り切れたのだろうか。

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さて、本日より『色絵・染付 正木春蔵展』が初日を迎えました。前述の背の高い日除けの下で涼んでいたキリンのごとく、首を長~くして待っていらした方が大勢いらっしゃったことでしょう。開店前から並ばれたお客様の中には遠方からの方も何人もいらっしゃいました。正木先生も本日はご在廊くださっています。今日お越しになれなくとも、先生の作品が店内を華やかに彩っていますので、ぜひ会期中に作品をご覧いただきたいと思います。

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61-2 染附草花文珈琲碗皿
カップ&ソーサ―としてだけでなく、受け皿も素敵なケーキ皿になりそうな碗皿。

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52 色絵牡丹文片口
「寿福無疆(じゅふくむきょう)」の文字。「無疆」はいつまでも続くことを意味し、長寿と幸福がいつまでも続くことを願う言葉。また「寿福康寧」という文字が描かれている片口もあり、幸福で長生きし健康で心安らかなことを意味しているのだと、正木先生から教えていただいた。いかにも幸福が舞い込みそうな片口。

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46 色絵蝶形小皿
蝶をかたどった小皿の中に梅だろうか、五弁の花が描かれ裏を返してみると、九谷焼を彷彿とさせるような色使いで実に華やか。

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左:19-1 色絵花文端反酒呑 / 右:20-2 色絵桜花文盃
正木先生の酒器はやはり優しいと感じるような作品。

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15 色絵飯碗
どの方向から見てもカラフルで楽しい模様が描かれている飯碗。こんな飯碗で食べたら、さぞかしご飯も美味しくなるに違いない。

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39 色絵カンタ文 三.五寸皿
カンタ文とはインド ベンガル地方で伝統的に作られてる刺繍の文様。家族の幸福と繁栄をひたすら願って祈りを込めた刺繍。そんな柔らかな感じが表現された絵柄。

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40 色絵黄花文小皿
こちらも愛らしい黄色の小花の柄がポップに描かれて、実に軽やかな印象。


今週の花


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花器: 金重陶陽 耳付花入
花: ミズヒキ・タデ・シュウメイギク
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秋を感じさせる花。白いミズヒキがタデの色と引き立て合っています。


正木先生。お名前と『大酒器展』、前回の『極上の湯盌展』で作品を目にする先生という印象をお持ちの方もいらしただろう。それだけに待ち焦がれていらした方が多かった個展。いらした方々の静かな中にも熱い想いを感じるような店内の雰囲気であった。
かく言う自分も、使わせていただいている湯呑は正木先生のもので、いつも魅惑的な図柄で常設棚に入れ替わり立ち代わり並ぶ作品は、つい見惚れてしまう。
いつか見えたイギリスからの女性のお客様が思い出された。先生の湯呑を一目見て気に入られ、幾つもお出ししてご覧いただいた。「それとそれを並べて。」「今度はあれとこれ。」などと、ずらりと並べたり、ふたつずつ比べたり、また1点だけ見たり・・・と、数学の順列・組合せを思い出すぐらい迷いに迷われた。時に近づき、また離れて見たりと、その見方はまるで美術館で芸術作品を鑑賞するようだった。忘れもしない20分以上悩まれ迷われて、牡丹の花が描かれた湯呑をお求めになった。家にカップだけを飾っているカップボードがあって、お気に入りを並べていると。きっと、先生の牡丹の湯呑も特等席を与えられているのだろうな・・・。

そんなことを考えていたら、昨日の暮れなずむ空が浮かんだ。夕闇と日が暮れる寸前の墨色と夕焼けのオレンジ色の混じりそうな微妙なせめぎ合いのようないっとき。いつまでも眺めていたくて、夜が来ないでこのままの時を止めてくれないだろうかと叶わぬ願いを抱いたほど。あまりにきれいで、しばらくボ~ッと佇んで、すっかり闇になって我に返った。先生の作品もそんな暮れなずむ空のようだとつくづく思う。


(藤)



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【色絵・染付 正木春藏展】
Exhibition of MASAKI Shunzo
開催期間:2024年9月13日(金) ~ 9月17日(火)
Exhibition : September 13 to September 17, 2024


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