魯卿あん便り～ 清風拂明月 ～

先日の「中秋の名月」。美しい月の名残を惜しむように、京橋 魯卿あんでは9月最後のお軸を変えております。季節に合ったお菓子とともに呈茶のご用意もしておりますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。

花入： 飯塚琅玕斎
花藍 銘「不老」共箱
お花：ツリバナ・リンドウ

北大路 魯山人　陶々菴箱

清風拂明月　明月拂清風

せいふうめいげつをはらい　めいげつせいふうをはらう

宋の時代の臨済宗黄龍派の禅師、死心悟新（ししん ごしん）の語で一見して対句となっているのが分かる。
明月は陰暦8月15日の「中秋の名月」、十五夜。言わずと知れた美しい月、仏教では仏に例えられる曇りなき澄み渡った満月のこと。そこに清らかな風が吹き抜けるのであるから、その美しさたるや最上のものである。月と秋風はどちらが主体かではなく、どちらもが影響し合い一層その美しさを極めている。この時、月と風は一体となっていて対立しあうようなものではない。
決して善か悪か、成功か失敗かという優劣を競うような二元論的な考えではなく、相手の良さを尊重し自分にも生かす。自他を区別するのではなく、他を認め良いところを取り入れることで互いに高め合うことで更に輝いていく。

もう一ヶ所お花を活けております。

花入： 北大路魯山人
信楽灰被花入　共箱
お花：シロバナホトトギス・チョウジソウ・ミズヒキ

夏に勢いのある緑色だったチョウジソウの実が茶色くなり、葉がきれいな黄色に変わっています。

お軸の話に戻るが、AIと人間の競い合いもある現代。否が応でも自己と他者を分け隔て、比べるような風潮になりがちではないだろうか。それが宗教や政治的な違いで争いを引き起こす要因にもなっているのではなかろうか。美しい情景の浮かぶ「清風～」の言葉の深意を今一度嚙みしめたいものだ。

（藤）

【魯卿あん便り　長月の室礼】

Monthly Shitsurai in Kyobashi Rokeian

開催期間：2024年9月1日(日) ～9月30日(月)
Exhibition : September 1 to September 30, 2024

◆京橋 魯卿あんの室礼をご紹介するページが出来ました。

　　　　　　ぜひ、ご覧ください。◆

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