【モダン 濱田庄司展 II 】 ~ 作品紹介 ~

早くも10月に入りました。
気温もグッと下がって、すっかり秋の気候です。
今か今かと待ちわびていた秋の訪れも、こんなにも急な変化に少し寂しさと戸惑いを覚えます。

さて、今週の金曜日からは、柳宗悦、河井寛次郎とともに民藝運動を推進した中心的存在であった【モダン 濱田庄司展 II 】を開催いたします。
2022年5月に開催いたしました【モダン 濱田庄司展】に続く第二段でございます。

「暮らしの中で使われる手仕事の日用品の中に『用の美』を見出し、活用していこう」という考えの民藝運動。上流階級が好んだ美術品「上手物」に対し「下手物」と呼ばれていた地方の手仕事を「民衆的工藝」、略して「民藝」と呼び替え守りました。
濱田庄司先生方は日本全国を巡り、実際に自分たちの技術や美的感覚で物作りを指導し、それまで注目されていなかった職人や産地を盛り立てました。


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「民芸品のよさは、やはりそこに健やかな暮らしのにおいがあるからである。
民芸の美というが、美は受け取る人がそう感じればいいので、自分から言い立てるものでないと思う」

濱田庄司先生は、益子の土の欠点と思われた厚手の器を、温かみを示すものとして生まれ変わらせました。
シンプルな造形に、釉薬の流描による大胆な模様を得意とし、太い筆による絵付けや柄杓による上薬の流しかけは、生命感溢れ、健康な暮らしに用いられる作風となっています。

今回も「モダニスト」としての作品が色濃く出た作品をこだわりを持って集めました。
会場に並ぶ優品の数々を、どうぞご高覧下さいませ。



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1. 柿釉赤繪方壷
Square pot, Iron rust glaze with overglaze enamels
17.4 / H22.0cm

益子の代表的な伝統釉とされる柿釉については、不純物を取り除く工程を加えることで、その潜在的な釉調や鮮やかな発色を引き出した。
小さな高台に四方形のボディー、口は8面に削られ成り立っている。
ボディーの四面には、生成に鮮やかな緑と赤のデザイン的な組紐が結ばれたような美しい十字模様がそれぞれに入っている。
後にも先にも、濱田庄司ほど柿釉の美しさを体現し、モダンに使いこなした作り手はいないと言われている。



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5.柿釉赤絵花生
Flower Vase, Iron rust glaze, Overglaze enamels
10.5 / 9.4 / H20.0cm

真っすぐに立った六角柱には小窓のように円や菱形が抜けるように柿釉を施し、その抜けの中に緑や赤で花の花芯を表現したり、濱田先生独特の菱形を三段合わせたような文様が描かれている。
入れる花材を選ばない、大変使いやすそうな作品となっている。


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12.柿釉赤繪角皿
Dish, Iron rust glaze, Overglaze enamels
20.4 / 20.0 / H4.2cm

とてもモダンなデザインの角皿。
畳付きから少し広がった所で立ち上がり、四方に3.5㎝程リムが付いている。
お皿中心は可愛らしい模様のラインで四方に仕切られ、口縁リムは、また細かく細分化され色や模様が入っている。
何とも言えない色の配分が、心地よく、そばに置いておきたくなるような親しみを感じる。



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16.海鼠釉黒流描角皿
Square dish, Black glaze with rust trail
30.0 / H6.0cm
※作品の状態についてお問合せ下さい
Please contact us about the condition of the works.

1968年に文化勲章を受章した後に、盛んに行われた「流し掛け」の技法。
手柄杓をかかげ、黒釉を高いところから垂らしこみながらフリーハンドで一筆書きのように模様を描き出された、躍動的なリズムを感じられる美しい作品。
立てかけて抽象絵画のように鑑賞しても絵になる作品。
畳付き角には、表にまで抜ける窯傷を埋めた跡がありますが、流し掛けの柄に溶け込み、気にならないほどの迫力がある。



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27.塩釉色差香爐
Insence Container, Salt glaze, Colored brush painting
11.2 / H8.0cm

塩釉は、釉薬の代わりに塩を使う特殊な施釉技法。
素焼きの作品にコバルト釉や灰釉をのせたものを高温焼成し、火を止めてから窯の外部より食塩を投入します。高温となる窯の内部では、投入した食塩が蒸気化し、硝子化することにより特有の美しい艶が生まれます。
塩釉は、13世紀のドイツで生まれた技法ですが、濱田先生が日本で初めて手掛けたとされています。
本作品も、小さな三つ脚がついたシンプルな形の香爐ですが、大胆に入ったコバルトと鉄の筆が鮮やかでリズムに乗って跳ねるような空気感を纏っています。
三つ脚の中心には貝の跡目もあり、嬉しい窯の痕跡が残る。



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29.流釉角瓶
Vessel, White glaze with black trail
10.2 / 10.0 / H23.4cm

こちらも大胆な「流し掛け」の作品。
すらりと立ち上がった形に、スルスルと縦方向に蛇行する線や筆が流れが魅了させる。
たっぷりとした四方形のボディーに小さな口ですが、動きのある枝物を挿すと、作品に入った鉄絵の動きと相まって、枝先まで躍動感が生まれそう。



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31.掛合掻落扁壷
Flat vase, Sgraffito, Black glaze
16.0 / 9.5 / H22.4cm

こちらも洗練されたデザイン。
長方型に平らに立ち上げられた形は、上面と口元は白く化粧され、それ以外はたっぷりの鉄釉で覆われている。
正面にはその釉を指で描き落としたような柔らかな曲線が左右非対称の矢羽根形に入っている。
また、作品裏側は立ち上る煙のような三本線がうねるように掻き落されている。
指で搔いた下からは、美しい柿色が覗いて、抽象的で、現代に溶け込む雰囲気がある。



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21.灰釉白掛切込茶盌
Tea bowl, White slip on ash glaze
12.1 / H11.2cm
喜寿制作 / Created for celebrating 77 years old

濱田先生が77歳の時に制作された作品。
高さを持って立ち上がれた胴には、二ヶ所、竹節のような段を作って削られている。
それにより覗く土粒に、益子独特のきめの粗さが残る土味が感じられる。
釉は益子の地に伝わった釉に独自な改良を加えたもので、従来の窯元が水甕や土瓶などに使用する原土に手を加えずに使った。機械文明を遮断していた益子は唐津を真似た釉薬が多いが、釉を造るために臼などで搗いてから使っていた。
本作品も、淡い飴色の上から斑唐津に近い白い灰釉が口縁にたっぷりと乗り、一部気泡を含んだように変化している。
若かりし頃滞在された沖縄の海の波打ち際をも思わせる作品。



会場にゆったりと並ぶ作品ですが、其々に迫力と説得力があり、見応え充分の展示内容になっております。
どうぞお時間を作って、作品を前にご覧戴けましたら幸いに御座います。





(葉)




 【モダン 濱田庄司展 II 】 
The Modern: Exhibition of HAMADA Shoji Vol.II
開催期間:2024年10月4日(金) ~ 2024年10月13日(日)
Exhibition : October 4 to October 13, 2024
休業日:10月10日(木)
Closed on October 10 Thu.





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8.白釉流描方瓶
Square pot, White glaze with black trail
13.2 / 13.0 / H24.6cm


 濱田庄司先生は主唱者であった柳宗悦氏と共に民藝運動の重要人物であり、益子を代表する陶芸家として世界的に知られています。同時に濱田先生にはコレクターとしての一面もありました。物置まで入れると19棟になるという古民家や建物コレクション、英国ウィンザーチェアやチャールズ・イームズなどの椅子や家具のコレクション、世界中から集めた美術品や工芸のコレクションなど枚挙にいとまがありませんでした。その一部は益子参考館などで見ることが出来ますが濱田先生という世界の幅の広さはご本人の作域の幅にも現れています。
 当苑では2022年に初めて「THE MODERN HAMADA SHOJI」を開催させていただきました。濱田庄司先生の偉業を網羅したものではなく「モダニスト」としての作品が色濃く出たものだけを集めて、かなり偏りをもった展示会でした。
 本年も同様の内容にこだわり、3点の方壷の名作を皮切りに40点近くの魅力的な作品を集め展示会の運びとなりました。是非ともご高覧いただけますようお願い申し上げます。
しぶや黒田陶苑



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11.柿釉赤繪鉢
Bowl, Iron rust glaze, Overglaze enamels
21.8 / H9.1cm
売約済 / sold





 京橋 魯卿あん 
 Rokeian
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