萬里水雲・・・
太陽が月にすっぽりと隠される、金環日食が南米や太平洋上の一部の地域で観測されたとニュースで報じていた。太陽と月、地球が一直線に並んだ時、太陽の中に月の影が入り込むことで、太陽の外側の炎がリングのように見えるのだと。残念ながら、日本では見ることはできなかったけれど、古の人々が黒い影の周りに太陽の炎が縁取りのように見える様子はさぞかし不思議で人知の及ばぬ神の力の如く目に映っただろうと想像する。
さて、しぶや黒田陶苑では『モダン 濱田庄司展 II』の開催中です。展示会名に「モダン」と冠しているように、偉大なる陶芸家である濱田庄司先生のまた違った魅力を感じていただける作品ばかりを集めての展観となります。会期も2週にわたりますので、是非ご覧いただきたいと思います。
静かな店内に濱田庄司先生の迫力ある作品が並びます。
左: 14. 黒釉錆流描皿
右: 15. 黒釉錆流描皿
先生が器を持って豪快に釉薬を流しかけるシーンが目に浮かぶような、即興性のある躍動感に満ちた皿2種。
29. 流釉角瓶
縦長のスッキリとした形の角瓶が先生の手による釉の模様により、実にダイナミックな印象になっている。
左: 36. 軟陶色絵盒子
右: 37. 鐵繪角盒子
全く雰囲気の異なる盒子を並べてみた。このようにして見ると、愛らしい柄の着物を着たお雛様と束帯姿のお内裏様にも見えてくる。
33. 掛分扁壷
扁壷といっても、ふっくらとした形状が何とも温かみのある優しい壷。横には雷紋であろうか釉薬を通してうっすらと覗く。
40. 塩釉櫛目藍飴差茶碗
釉薬の代わりに塩を用いて焼成された茶碗。独特のつやが小さめの茶碗ながら何とも惹きつけられる。
42. 昨日在庵 今日不在 明日他行
読んで字のごとく、先生の三日間のスケジュールが分かる額。昨日ならいたけれど、この二日間に先生にお会いしたいと出向いても「わたしはいないよ!」と宣言しているようなユーモラスな語。
棟方志功
41. 萬里水雲長云々器
仏語の言葉から来ており、“人生は涯(はて)しない大海原を漂うようなもので、何処へ行くのかわからない。今日もまた菩薩の慈しみを信じて、航(わた)るのみである”といった意味。
濱田先生、バーナード・リーチ夫妻とも交流があり、イギリスのセント・アイヴスの窯でも作陶をしていらっしゃる。訪れた地の土・釉・窯に合わせて作品を作ることを苦ではなく、行く先々の状況に逆らうことなく合わせて制作することをこの上なく、幸せで感謝していると仰っている。轆轤の作業中に形が崩れても、それがかえってよくなり思わぬ効果をあげることがあり、形は轆轤に委せ、絵付けは筆に委せ、焼くのは窯に委せる…という気持ちになることがあるとも吐露しておられる。
お着物か作務衣か分からないが優しい眼差しを投げかけ、柔和な笑顔を向けている先には何があるのだろう。店内に飾っている濱田庄司先生の寛いだお写真を拝見すると、ご自身のお気持ちと棟方志功先生の軸の言葉が妙にマッチしているように思えてくる。
(藤)
※無断転載、再配信等は一切お断りします。
開催期間:2024年10月4日(金) ~ 10月13日(日)
Exhibition : October 4 to October 13, 2024
休業日:10月10日(木)
Closed on October 10 Thu.
Exhibition : October 4 to October 13, 2024
休業日:10月10日(木)
Closed on October 10 Thu.
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