【モダン 濱田庄司展 II 】 二週目 ~ 作品紹介 ~
10月に入ってもまだ、夏日と肌寒さを感じる気温とを彷徨っていますが、ほったらかしにしていたお庭をゆっくり巡ると、そこかしこに秋の気配が色濃く漂います。
気付けば野葡萄の実も青や紫に染まり、ムラサキシキブも白から紫色の実がたわわに実り枝をもたげています。
気付けば野葡萄の実も青や紫に染まり、ムラサキシキブも白から紫色の実がたわわに実り枝をもたげています。
さて此処しぶや黒田陶苑では、先週の金曜日より【モダン 濱田庄司展 II 】を開催しております。引き続き日曜日まで展示しております。
濱田先生を象徴するような作品から、珍しい作品、盒子などの小品まで多数ご用意しております。
濱田庄司先生
現代に溶け込むモダンな作品を揃えて作品をご用意いたしました。
どうぞお時間を作って足をお運び下さいませ。
どうぞお時間を作って足をお運び下さいませ。
3.柿釉赤繪方壷
Square pot, Iron rust glaze with overglaze enamels
17.6 / 17.2 / H21.8cm
Square pot, Iron rust glaze with overglaze enamels
17.6 / 17.2 / H21.8cm
益子の釉薬「赤粉」は、屋根瓦や水瓶などに塗られるだけで、あまり美的とは考えらていなかった。
しかし、濱田先生はこれを低温で焼くなどの改良を重ね、果物の柿を思わせる「柿釉」を作り上げた。
さらに、この柿釉に裏山のクヌギの木を燃やしてできた灰のエキスを混ぜることにより 渋みのある「黒釉」なども生み出された。
本作品は、そんな美しい柿釉の下から、黒釉が覗き落ち着いた雰囲気。
四方には十字模様を変形させたような緑と黄色の文様が入る。
しかし、濱田先生はこれを低温で焼くなどの改良を重ね、果物の柿を思わせる「柿釉」を作り上げた。
さらに、この柿釉に裏山のクヌギの木を燃やしてできた灰のエキスを混ぜることにより 渋みのある「黒釉」なども生み出された。
本作品は、そんな美しい柿釉の下から、黒釉が覗き落ち着いた雰囲気。
四方には十字模様を変形させたような緑と黄色の文様が入る。
今回、この方形の胴部に八角形の広い口が付いた型物の作品が3点並んで飾られているが、そのどれもが違う釉と絵付けで全く異なる雰囲気で佇むのも、また面白く、是非会場でご覧戴きたいところ。
今回も大きな流し掛けによる作品が幾つか展示されている。
ひとつ、濱田先生が流し掛けの実演をした時の逸話が残されている。
呼吸を整え終えると柄杓に半分ほど釉薬を汲み、それを(素焼きした)陶器に掛け流し、一気に模様を描いた。
筆による絵付けと違って速い。
観客の一人が「15 秒しかかかっていない。速すぎる。そんなんで満足できる作品ができるのか」と訊いた。
「この皿を作るのには60年と15秒もかかっているのです」と先生はお応えになった。
呼吸を整え終えると柄杓に半分ほど釉薬を汲み、それを(素焼きした)陶器に掛け流し、一気に模様を描いた。
筆による絵付けと違って速い。
観客の一人が「15 秒しかかかっていない。速すぎる。そんなんで満足できる作品ができるのか」と訊いた。
「この皿を作るのには60年と15秒もかかっているのです」と先生はお応えになった。
60年の知識と経験、弛まぬ努力によって体に叩き込まれた技がわずか15秒の絵付けを揺るぎないものにする。瞬時の釉掛けに、陶芸人生の全てが入っている、と言わんとされました。
一瞬の手の感覚のみを頼りにした作為のない濱田先生の作品に、今なお多くの人が惹かれるのも納得の作品である。
益子でいう並白は濱田先生お気に入りの寺山白土と木灰、少量の長石を配合したものを使用した。
鉄絵の発色がよい透明釉となり、やや焼成温度が低いと独特の梅華皮が出て、鉄絵や皮鯨に合い、無地でも力のある釉薬となる。
それらは、原土に手を加えず、臼などで搗いて釉を作られた。
本作品も、シンプルな形状ではあるものの、高台周囲は大きく削られ、少しチリチリと釉が縮みを感じられる。
また、流し掛けと塩釉の技法を取り入れた、流れる鉄釉の表情が面白い作品となっている。
ふっくらと膨らんだ胴には、粗い筆で白化粧が施されている。
その上から濱田先生特有の草花文の鉄釉が続き、見方によってはトンボが連なって飛んでいるかのように見える。
能書家の祖父の影響で、子供の頃から習字が得意だった濱田先生。
15歳の時には書家の丹羽海鶴(1863-1931)のもとで六朝体の書を学んだ。
本来画家志望だったが、陶芸の道を進む中で絵よりも書の重要性を感じるようになったという。
実際、濱田先生の絵付は時として書を思わせるものがあるが、本作品の筆捌きや、力の強弱の入れ方などにも、そんなお心の内が見えるよう。
口縁下に一筋、また、高台部分も1㎝程、土を盛り上げて作っているところも、単調な中に変化が出て面白い。
その上から濱田先生特有の草花文の鉄釉が続き、見方によってはトンボが連なって飛んでいるかのように見える。
能書家の祖父の影響で、子供の頃から習字が得意だった濱田先生。
15歳の時には書家の丹羽海鶴(1863-1931)のもとで六朝体の書を学んだ。
本来画家志望だったが、陶芸の道を進む中で絵よりも書の重要性を感じるようになったという。
実際、濱田先生の絵付は時として書を思わせるものがあるが、本作品の筆捌きや、力の強弱の入れ方などにも、そんなお心の内が見えるよう。
口縁下に一筋、また、高台部分も1㎝程、土を盛り上げて作っているところも、単調な中に変化が出て面白い。
静かではあるものの、どこか気になる存在だったこちらの作品。
丸く大きな白抜きが正面と背面に施されている。
よく見ると、その間には、それよりも一回り小さな影のような丸が浮かび上がる。
月と太陽のような作品。
塩釉独特の、フツフツとした肌合いが、太陽の陰にぼんやりと浮かぶ月のようで、何とも面白く、珍しい作品。
丸く大きな白抜きが正面と背面に施されている。
よく見ると、その間には、それよりも一回り小さな影のような丸が浮かび上がる。
月と太陽のような作品。
塩釉独特の、フツフツとした肌合いが、太陽の陰にぼんやりと浮かぶ月のようで、何とも面白く、珍しい作品。
24.灰釉茶盌
Tea bowl, Ash glaze
12.6 / H9.7cm
Tea bowl, Ash glaze
12.6 / H9.7cm
たっぷりと厚みを持って掛けられた釉や、大胆な柄の運びや色遊びをされた作品が多い中、ひっそりと佇むお茶碗。
背の低い樽型に引き上げられた胴には、優し気な自然釉の灰による山葵色のような淡く濁った黄緑色が掛かっている。
少し張り出した腰の部分や、釘彫された草花文、見込みには釉が溜まり、美しい色を成す。
草花文の彫の流れもまた、巧みな筆使いに似て、何とも言えない抑揚があり、穏やかな空気を纏う大変珍しい作品。
背の低い樽型に引き上げられた胴には、優し気な自然釉の灰による山葵色のような淡く濁った黄緑色が掛かっている。
少し張り出した腰の部分や、釘彫された草花文、見込みには釉が溜まり、美しい色を成す。
草花文の彫の流れもまた、巧みな筆使いに似て、何とも言えない抑揚があり、穏やかな空気を纏う大変珍しい作品。
珪酸分が多く鉄分を含み、可塑性に富み、耐火性も大きいのが特徴の益子土。
この粘土を他の成分を加えずに使うため器体はやや厚手となってしまう。
そんな益子土の欠点と思われた厚手の器を、温かみを示すものとして生まれ変わらせた濱田先生。
この粘土を他の成分を加えずに使うため器体はやや厚手となってしまう。
そんな益子土の欠点と思われた厚手の器を、温かみを示すものとして生まれ変わらせた濱田先生。
また、益子の土は釉薬の乗りが非常に良いという特徴がありますが、殆ど手轆轤のみを使用するシンプルな造形の中に、太い筆による絵付けや柄杓による釉薬の流描による大胆な模様を得意とし、大らかな生命力溢れた健康な暮らしに用いられる作品をお作りになりました。
それは、現代の私達にも寄り添い、豊かな心にさせてくれます。
どうぞ会場でゆったりとした時間をお愉しみくださいませ。
(葉)
【モダン 濱田庄司展 II 】
The Modern: Exhibition of HAMADA Shoji Vol.II
開催期間:2024年10月4日(金) ~ 2024年10月13日(日)
Exhibition : October 4 to October 13, 2024
休業日:10月10日(木)
Closed on October 10 Thu.
The Modern: Exhibition of HAMADA Shoji Vol.II
開催期間:2024年10月4日(金) ~ 2024年10月13日(日)
Exhibition : October 4 to October 13, 2024
休業日:10月10日(木)
Closed on October 10 Thu.
濱田庄司先生は主唱者であった柳宗悦氏と共に民藝運動の重要人物であり、益子を代表する陶芸家として世界的に知られています。同時に濱田先生にはコレクターとしての一面もありました。物置まで入れると19棟になるという古民家や建物コレクション、英国ウィンザーチェアやチャールズ・イームズなどの椅子や家具のコレクション、世界中から集めた美術品や工芸のコレクションなど枚挙にいとまがありませんでした。その一部は益子参考館などで見ることが出来ますが濱田先生という世界の幅の広さはご本人の作域の幅にも現れています。
当苑では2022年に初めて「THE MODERN HAMADA SHOJI」を開催させていただきました。濱田庄司先生の偉業を網羅したものではなく「モダニスト」としての作品が色濃く出たものだけを集めて、かなり偏りをもった展示会でした。
本年も同様の内容にこだわり、3点の方壷の名作を皮切りに40点近くの魅力的な作品を集め展示会の運びとなりました。是非ともご高覧いただけますようお願い申し上げます。
しぶや黒田陶苑
芹澤 銈介 / SERIZAWA Keisuke
43:暖簾 / Noren curtain
43:暖簾 / Noren curtain
事務所入り口には、濱田先生と同じく民藝運動に共鳴され活躍された芹沢銈介先生の暖簾を掛けております。
先生方が活躍した時代と、想いを、一緒に感じて戴けましたら幸いでございます。
先生方が活躍した時代と、想いを、一緒に感じて戴けましたら幸いでございます。
◇
しぶや黒田陶苑の「公式LINE」が出来ました。
当苑では、渋谷・京橋の店舗にて、年間約40回の陶・漆・金工・硝子・書画など様々な展示会を企画開催しております。
今後の展示会の案内をお客様一律に発信する為、是非ご登録くださいませ。
展示会に関するお知らせや、YouTubeの配信のお知らせをさせて戴きます。
当苑では、渋谷・京橋の店舗にて、年間約40回の陶・漆・金工・硝子・書画など様々な展示会を企画開催しております。
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