駘蕩な気持ち

めっきり、日が暮れるのが早くなり「秋の日はつるべ落とし」とは、よく言ったものだなあと思う。夏の間フリルのようなピンクの花で楽しませてくれたサルスベリの伸びた枝を切っていて、いい加減にやめればよいものを「もう少し、もう少し」と欲を出しているうちに気づくと落ちた枝をまとめる手元も危ういほど暗くなっていた。

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開催中の「モダン 濱田庄司展 II」、会期も13日(日)までとなりました。なかなか他ではお目にかからないような作品も展示しておりますので、是非ご覧いただきたいと思います。

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17.黒釉錆絵角盛皿

砥粉(とのこ)を水で練り、生漆(きうるし)をまぜた錆漆で大きな格子が描かれている。チェック柄のウインドウペンをラフに描いたようなウールの生地を思わせる。

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19.飴釉流描皿 (六客)

使い勝手のいい六寸皿ほどの大きさ。酸化焼成で飴色の地に十字に走る白線が大胆でまさにモダン。


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21.灰釉白掛切込茶盌
喜寿制作 

”喜寿制作”とあるように、御年77歳の時に制作された茶碗。口縁からたっぷりとかかった泡のごとき釉が、重陽の節句の菊の香りを移す真綿のような柔らかさをもって目に映る。

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27.塩釉色差香爐

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5.柿釉赤絵花生

濱田庄司先生らしい、柿釉の花生。五角形という角が際立つ形状ながら、こっくりとした柿色によって、それを払拭した温かみのある花生となっている。


今週の花

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軸: 棟方志功 41. 萬里水雲長云々器 
花器: 濱田庄司 4.塩釉丸紋壷
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スグリ
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フデリンドウ


濱田庄司先生、暖房は火鉢、こたつは炭を使ったもの。それに対して、冷蔵庫、テレビ、扇風機などの家電類はアメリカ製だったという。
西洋文明の素晴らしさを十分に認識していらした先生だからこその選別が生活の中できちんとなされていた。日々の暮らしの中で必要なものとそうでないものを見極めることも瞬時にお出来になったのだろう。

きらびやかさはないが、日常的に使い易い形、それにそぐう文様、簡素な絵付け等、一見実用の為だけに作られた器が、毎日幾度となく使う人々の心に駘蕩な気持ちをもたらしたに違いないと思う。だからこそ、そこに日本独自の美を見出されたのではないだろうか。
かく言う自分も、作品を眺めているうちに柔和な気持ちになり、芸術作品を鑑賞した時と似通った心持ちになってきた。



(藤)
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【モダン 濱田庄司展 II 】
The Modern: Exhibition of HAMADA Shoji Vol.II 
開催期間:2024年10月4日(金) ~ 10月13日(日)
Exhibition : October 4 to October 13, 2024
休業日:10月10日(木)
Closed on October 10 Thu.

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