粋・いき

ライブが終わって、まだ余韻の残るグルーブ感に浸りながら会場を出て夜空を見上げた。こんな晩は、殊のほか月も輝いて見えるなと思って眺めたが、あまりに煌々と照る月に立ち止まってスマホを取り出した。周囲を見ると同じように撮影する姿が何人もいて、はたと気付いた。そう、スーパームーン。月と地球の距離が最も近くて大きな満月が見える晩。そんな月を見ながらライブの高揚感を道連れに帰途についた。


昨日初日を迎えた、当苑の『五十五周年記念 特別展 【 粋 II 】』二日目となりました。土曜日ということもあり、お客様がじっくりとご覧になっていらっしゃいます。
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黒田辰明 No.18 黒沃地四稜茶器

先生はご自身による木工と漆の一貫制作によって実用的でありながら美を兼ね備えた新たな工芸の世界を切り拓いた。漆を塗ってまだ乾かぬ間に乾漆粉を蒔きつめ、その上に漆を塗って磨き出すという 平安時代に生まれた「沃懸地(いかけじ)」という技法による作品。漆黒一色であるが、全体に施されたそれにより、品格のある華やかさをもつ。椅子をはじめとした家具・調度は力強い大作といった感があるが、掌に収まるほどの小さな四稜茶器は典雅である。


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富本憲吉 No.2 白磁壷
ジョルジュ・ルオー No.26 糸杉のある小風景

ルオーの宗教画ではなく、ゴッホがよく描いていた糸杉がモチーフになった絵。


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加藤土師萌 No.19 黄地紅彩雲龍文壷

中国色絵磁器の中でも最も困難とされた「黄地紅彩」「萌葱金襽手」を再現なさった先生の無形文化財の認定に至った「黄地紅彩」の作品。13×高さ13.3cmほどの小振りな壷ながら、堂々たる風格を持つ。


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福田平八郎 No.29 富士

福田平八郎と聞いてすぐに思い浮かぶのは、雨が降り出し、雨粒が屋根瓦に落ち、また消えていく様子を描いた「雨」や湖面にきらめく光を表現した「漣」などだが、こちらは赤富士を微妙なグラデーションで描いた作品。単純化された富士山がシルエットのように表現され、鮮烈な赤の濃淡がまるで残像のような感覚を覚える。


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加藤唐九郎 No.12 きせとちやわん 銘「黍餅」

見事な油あげ手の茶碗に1点、銅緑色の斑文が実に鮮やかに際立っている。


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富本憲吉  No.1 白磁壷
山口薫 No.28 甲斐虎、クマの顔

富本先生、「壷を見る上で最も肝要なことは、その壷の形である」とご自身で語っている。そして、装飾のない白磁の壷が、工芸的な点においても、鑑賞する点においても最高なものと思えると。肩から胴にかけてのたっぷりとした膨らみをもったカーブは豊潤な観を呈していて美しい。

今週の花  

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フジバカマ

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ホトトギス

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ノコンギク

この度の五十五周年記念 特別展 「粋 Ⅱ」。まさに粋(すい)を集めた、特別な優品を選び抜いた展示となっている。にも関わらず、博物館や美術館のように四角いガラスのケースの中に納まって、まるで別次元にあるかのような、所詮手の届かないものであるといった展示方法ではない。それどころか、ここから先へは立ち入り禁止の線もなく、顔を近づけて鑑賞することも可能。展示をご覧になった方が「博物館級の作品がありますね。」と仰って帰られる場面に何度か遭遇した。確かに防犯や作品保護の意味合いからも、ガラスケースや作品との間隔を保つことは権威ある展示方法には違いない。だが、そこに、ある種の鑑賞の隔たり、作品との対し方に距離感を覚えずにはいられないような気がする。

それを思うと当苑の展示は、実に「粋(いき)」ではないか!と、ふと感じた。



(藤)
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開催期間:2024年10月18日(金) ~ 10月27日(日)
Exhibition : October 18 to October 27, 2024
休業日:10月24日(木)
Closed on October 24 Thu.

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