魯卿あん便り 特別展 粋 II【大藝術家 北大路魯山人展】より

いつの間にか、我が家の愛猫達が頬を寄せ合って居眠りをするような季節になりました。あんなに毛むくじゃらでも、もう肌寒いんですね。
戯れて、本気で喧嘩をして走り回っていても、結局いちばん安心して居られるのは、同じ母猫から生まれた兄弟なのね・・・と、とっても微笑ましくて、愛おしくなります。


見つめ合う子達は、ここにも。

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No.33 竹林小禽
https://www.kurodatoen.co.jp/exhibition_work/202410101026-33/

竹が細く、若い笹の青竹を思わせます。

濃淡ある水墨で、落ち着いた筆使いをもって金屏風に描かれている竹林は、閑雅な景色を目の前にしているよう。

鳥は雀でしょうか、中央に配された薄墨の竹に一羽、しっかりとした存在感で描かれています。(一番上の写真の左側の一羽です。)
振り返って何を見つめているのか・・・その目線を追うと、屏風の右隻には、もう一羽の雀が、竹笹に隠れるようにして目線を応じています。(こちらは写真右側の一羽。)

右隻全体を鑑賞してみますと、笹に隠れるような雀を起点として、竹笹が円を描くように生い茂っています。その円の流れを追って見ると、視線が左隻の雀へ、そしてその先の竹林へと促されていくのに気がつきます。

左隻はというと、葉の形自体は同じようですが、それぞれの笹は直線的に配されていて、右隻のものとは違う竹林を見ているようです。
それでいて右隻側へと傾いている直線的な竹は、右隻の曲がり竹のやわらかさに受け止められて・・・なんだかこの♾️の字のループは永遠に見ていられそうです。

魯山人先生が濃淡の使い分け、紙面の緊密と余白の生み出し方を先達の書から学び、また自然美の中から感じ取り、景色を生の活の場へ取り込んでいった空間演出を、身体中で感じられる逸品。
今、竹林を目の前にして私が立ち、この狭い小径をこれから進んでいくというような、自己との一体感を感じるのは気のせいでしょうか。

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*上の画像は、下の画像の右上部分、最も墨の薄いところ。近寄って見ると朦朧としているが、離れるとしっかりと形状が浮き立っています。

少し暗がりに置くとまた神秘的。

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さて、暗がりの陰翳を愉しむものといえば、月と太陽の存在は欠かせません。魯山人先生の代表作の一つとも言える、日月椀。

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この日月椀はシンプルな意匠ながら豪壮な美しさが印象的で、現在も写しが多く作られていますが、箔の押し方が汚いものがホンモノの魯山人作とも言われるそうです(もちろんそれは単純にすぎますので、十分にお気をつけください)。

魯山人先生が職人に、あえてムラが出るように箔押しするよう指示されていたというのは、上の屏風の「たらし込み」や「滲み」にも見られるような、墨や箔など材料そのものが持つ風合いを愉しみ、生かすというお心があるからでしょう。

昭和17年頃から薪が入手困難となり窯焚きができず、陶磁器の制作を一時期中止し漆芸に専念してから、金沢、山中、名古屋などから名工を呼び寄せ、多くの漆作品が生み出されます。

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No.40 金彩色絵糸巻文長角向付 五客入
https://www.kurodatoen.co.jp/exhibition_work/202410101026-40/

こちらは金泥を効果的に使用した作品です。

魯山人先生は糸巻のデザインがお好きだったようで、現在ではさまざまなバリエーションに富んだ作品が見られます。

初出は星岡茶寮時代の長方形の向付。同じ作品が足立美術館陶芸名品選図録に紹介されています。解説によると作品は昭和5年(1930)47歳の時の作品とあり、「魯山人」との銘からも星岡茶寮で実際に使用するために生産されたものと考えられます。

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サイズや、少し高低差のある縁、色の配置など、お料理の邪魔をせず、生かすように考えられたデザインです。重ねやすいのも喜ばしいところ。
正方形の糸巻向付もよく見ますが、そのデザイン展開は戦後に見られるもので、銀彩を施したものや櫛目を入れたもの、手塩皿のように小ぶりのものなど、様々です。

お皿の背面を見ると糸の端までがきちんと描かれているというから、面白いですね。



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土瓶も鉄描、色絵、鉄絵加彩、絵瀬戸など、昭和24年(1949)頃に多く作られています。

今回展示している作品は呉須と鉄絵による麦わら手で、ゆったりと描かれた曲線が土瓶に視覚的な丸みを与え、長閑な気持ちでお茶をいただけそうな気が致します。

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厚手でしっかりとした重みがありますが、味わい深い豊かさがあります。本体の注ぎ口近くに「ロ」のサイン。



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No.45 志埜グイ呑
https://www.kurodatoen.co.jp/exhibition_work/202410101026-45/

No. KR-17 銀彩線彫文徳利

口元の反りがなんとも愛おしいぐい呑です。
縁を持つ指にわずかにひっかかる冷たい土の感触、また筒形の長さが掌にすっぽりと収まる大きさが心憎いほど心地よく、愛らしい。

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志野の緋色は激しく、焦げて泡立つほどにで、まるで魯山人先生の芸術に対する思いを閉じ込めているよう。背面には、真っ赤な刻銘「ロ」が入って居ます。

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今週の床の間

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No.34 信楽花入(参考出品)
https://www.kurodatoen.co.jp/exhibition_work/202410101026-34/

お花:ツツジ・柘榴


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No.47 水仙画賛
https://www.kurodatoen.co.jp/exhibition_work/202410101026-47/

No.48 信楽灰被花入(共箱)
こちらの花入は図録掲載外につき、詳細はお問い合わせくださいませ。

お花:リンドウ・ホトトギス・泡黄金菊





京橋での特別展はあと2日。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

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五十五周年記念 特別展
【 粋 II 大藝術家 北大路魯山人展】

開催期間:2024年10月10日(木) ~ 2024年10月26日(土)

The 55th Anniversary Special Exhibition “粋 Sui II”
Exhibition of KITAOJI Rosanjin 

Exhibition : October 10 to October 26, 2024


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ごあいさつ

 この度、開苑五十五周年を記念しまして「粋 II」を開催する運びとなりました。
東京美術倶楽部の第二十二回東美特別展の当苑のブースでは富本憲吉先生の三十糎を超える白磁大壷二点と師弟関係のあっ た加守田章二先生、栗木達介先生の晩年の貴重な作品、京都陶芸界の次世代として認めていた八木一夫先生の作品を展示いたします。


 京橋の魯卿あんでは北大路魯山人先生の里帰りの作品や、某芸術家旧蔵の名作二点を中心に先生の偉業をご紹介いたしま す。しぶや黒田陶苑では内容を広げまして川喜田半泥子先生や加藤唐九郎先生の名碗、加藤土師萌先生が文化庁に納められ た黄地紅彩の姉妹品などの近現代の工藝から、俳優の神山繁さんが何よりも愛されていたジョルジュ・ルオーの小品、山口 薫先生が描かれた愛犬のクマや愛猫のクロの二枚の絵、村上華岳先生が自らのために残されていたと言われる美しい仏画などの書画を含め、名作三十二点を一堂に並べさせていただきます。



三年に一度の「粋」のそれぞれを三つの会場にてお楽しみくださいますようお願いいたします。



しぶや黒田陶苑




渋谷店で行われております五十五周年記念 特別展 【 粋 II 】の出品作品はこちらよりご覧いただけます。

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京橋 魯卿あん
〒104-0031 中央区京橋2-9-9 ASビルディング1F
営業時間:11:00~18:00
定休日:日曜日・祝日
TEL: 03-6228-7704 FAX: 03-6228-7704

http://www.kurodatoen.co.jp/rokeian/



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