外見と中身
長い暑さのせいで植物も疲れが出ていると思うのだが、なぜだか今年はやけにトカゲに出会った。みずやりをしようと庭に出ると、必ずチョロッと尻尾をくねらせて目の端を横切っていく。水しぶきに当たると慌てて陰に逃げていくのが、ほんとにか細い赤ちゃんトカゲだと動きもどことなく幼げで可愛らしかった。寒くなってくると冬眠するらしいが、この陽気だと冬眠の準備も遅れそうだ。
好評を博している『五十五周年記念 特別展 【 粋 II 】』、今週の日曜日27日までの会期となっております。間近に優れた巨匠作品をご覧になっていただける、またとない機会ですので、ぜひお運びください。
加藤土師萌 No.21 仿嘉靖黄地赤彩魚藻文角皿
古来より魚は多くの卵を産むために子孫繁栄の吉祥文様として尊ばれた。本歌は明の嘉靖皇帝の時代に景徳鎮で作られた「魚藻文壷」。先生が苦心の末に復元に成功した「黄地紅彩」の技法が中央の魚に如実に表現され、取り囲むようにスッキリとした筆致で描かれた周囲の藻や水草、蓮でより生き生きとしている。高台に本歌の「大明嘉靖年製」に倣い、先生の名前「土師萌製」を記している。
加藤土師萌 No.22 仿嘉靖黄地赤彩菊牡丹文角皿
この作品も嘉靖年間に景徳鎮で作られた「黄地赤彩花弁文方盤」を本歌としている。「黄地紅彩」によって重厚感のある角皿は見込み部分を右側に菊、左側に牡丹を配して描き、額縁の中の絵画のような印象をもつ。
所載:
『加藤土師萌作品集』 朝日新聞社 1974年
「人間国宝をしのぶ 加藤土師萌陶業展」 日本橋髙島屋他 1974年
『現代の陶芸〈第五巻〉楠部弥弌・加藤土師萌・清水六兵衛』 講談社 1975年
「近代陶芸をささえた巨匠 加藤土師萌回顧展」 瀬戸市文化センター 1990年
加守田章二 No.25 盃
加守田先生は「曲線彫文」を発表した翌年に色彩のある作風を打ち出している。青、白、黒色などの短い線をぐい呑をぐるりと覆うように一面に隙間なく描いているが、重苦しさは感じず実に軽やかな作品である。
黒田辰明 No.64 乾漆金根来十字花盆
ヤマボウシの4弁の花をかたどったような形が、なめらかに塗られた朱漆で輪郭が更にはっきりとして美しい。
今週の花
富本憲吉 No.2 白磁壷
ジョルジュ・ルオー No.26 糸杉のある小風景
ジョルジュ・ルオー No.26 糸杉のある小風景
サンキライ
後ろの方には、サンキライのまだ緑色の実も見え、季節の移ろいが分かる枝。
ノコンギク・小菊
加守田章二先生は、ご自分の個展の時にこんな言葉を残していらっしゃる。
私は陶器は大好きです しかし私の仕事は陶器の本道から完全にはずれています
私の仕事は陶器を作るのではなく陶器を利用しているのです
私の作品は外見は陶器の形をしていますが中身は別のものです
これが私の仕事の方向であり 又私の陶芸個人作家観です
歴史に名を残す先生方の優品の数々を拝見していると、その作風の変遷や作意の変化の一端が垣間見える。その時々の目指されたものや心情が異なって作品に投影されている。加守田先生の言葉のように、陶芸家、漆芸家…と言った一つの肩書の呼称で括るのは本当は違うのかもしれない。そんな気がする。
(藤)
※無断転載、再配信等は一切お断りします。
開催期間:2024年10月18日(金) ~ 10月27日(日)
Exhibition : October 18 to October 27, 2024
休業日:10月24日(木)
Closed on October 24 Thu.
Exhibition : October 18 to October 27, 2024
休業日:10月24日(木)
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