やきものをたのしむ

三連休初日からは一転、昨日からは暖かく過ごしやすいお天気が続いております。
さて、しぶや黒田陶苑では先週の金曜日より【気と明る寂び 辻清明展】を開催しております。

辻清明先生が幼い頃から家には毎日骨董屋さんが来て、その家の戸を開け方で先生のお父様は骨董屋の旦那がどの程度のモノを持ってきたか分かってしまうような方だったそうです。
そのようなお家に育ち、小学四年生の時には仁清の雄鶏の色絵香炉を誕生日にねだり、十歳には轆轤を回し、十四歳でお姉様と共に辻陶器研究所を設立されました。

やきものに親しみ、東西関わらず、また世界各国のものを使い楽しまれていた辻清明先生。

「日本のものでは唐津、美濃、志野、織部、無釉の信楽などですが、日常に花を活けるのは信楽や唐津。海釣りに出かけて大漁だったりすると信楽の大板皿に羊歯の葉を敷き、とれたての魚を刺身にし、大胆に盛りつけて楽しみます。色絵のものは懐石料理を盛り、取り合わせの妙を楽しむこともあります。中でも最も味わい深いのは、無釉の信楽です。侘の中の明る寂があるのです。壺などは、その時代の精神美術そのものとして味わうことができましょう。
 ”やきもの”とは古陶、新陶を問わず、探れば探るほど奥が深くなるけれども、魅力のつきないものといえるでしょう。」
(NHK趣味百科 やきものをたのしむ)

やきものの魅力をよく知る先生だからこそ、先生の作品はどの角度から見ても奥行き深い、雅致ある作品を生み出されました。


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No.21 信楽水指 / Water container, Shigaraki ※売約済 / Sold
19.0 / 18.6 / H15.6cm 共箱

No.13 刷毛目茶盌 / Tea bowl, Brush marks
13.8 / 13.1 / H7.9cm 共箱

池田巖 金輪寺

飯塚小玕斎 煤竹裏節茶杓「一葉」

信楽水指は見込にぐるりと轆轤で成形した跡がみられ、堂々とした力強さを感じます。
水指の表面には「>>>」の連続模様のアクセントも先生が楽しんで作られた様子も目に浮かび、自然釉が大きく正面を作り出しています。
茶碗は胴が締められ横に豊かに広がった形で、柔らかな灰釉に刷毛目が入り混じるように重なっています。



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No.44 桔梗唐津向附(六客)/ A set of 6 bowls, Bell-flower shaped, Karatsu
12.6-14.2 / H7.0cm
共箱

桔梗は弓を斜めに切り出されることで花弁を美しく作り出しています。
またヘラ先で花脈を彫り、鉄で縁取ることでメリハリを生み、可憐なだけでなく花言葉にもある「気品」な姿を表しているようです。


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No.46 慶州土木の葉皿(五客)/ A set of 5 leaf shaped plates, Gyeongju
23.8-24.5 / 15.5-15.9 / H2.4-2.8cm 共箱

木の葉皿は先生が柏の葉を側に置いて作られたものです。
型を取って写すのでは簡単ですが、それでは魂の入った作品にはならないと、柏の葉をなるべく自然の形に作ろうと一枚一枚たたらづくりで生み出されたものです。
一部は釉薬がかかりきっていない、あるいは剥けたのか素地が見え、粒石を多く含んだ土はより木の葉皿を自然に近づけています。

因みに、辻先生は1982年に韓国慶州で約一か月程白瓷や灰釉で作陶を試みています。
土を持ち帰って日本でも焼いたときには同じ土でも一味異なるものができたといい、そこでやきものはやはり風土と密接に結びついていると感じたそうです。


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No.49 信楽板皿 銘「日の出」/ Plate, Shigaraki, "Sunrise"
23.0 / 22.5 / H5.1cm 共箱
所載:『作陶五十年記念 辻清明作品集』講談社 1986年

昭和三十年代後半、日本人独特の精神に触れる作品を制作したいと、辻先生はいよいよ信楽に狙いを定めて作陶をされました。
先生は「炎に生きる 辻清明自伝」で次のように綴っています。
「信楽は、古代には経筒や経塚壺などの仏器を焼いたと推測され、中世には農民のために種壺やすり鉢を生産した窯である。武野紹鴎や千利休によって、茶にも取り入れられていたが、何より私を惹き付けたのは、日本人独特の魂の原点というべきものが感得されたからであった。」

「日の出」と付けられたこの板皿ですが、真ん中に現れる日の丸、正にこの信楽の土で日本人の魂の原点に触れるものをと一つの意志が込められているような気がします。


会場にはお茶碗、酒器、皿、茶陶、はたまた硝子や動物をモチーフにした作品など多様で、見ている側も大らかになれるような作品が並んでおります。
ぜひお時間を見つけて足をお運びいただければ幸いに存じます。

(梨)
◇◇◇


【気と明る寂び 辻清明展】
開催期間:2024年11月1日(金) ~ 2024年11月10日(日)
休業日:11月7日(木)

Exhibition of TSUJI Seimei 
Exhibition : November 1 to November 10, 2024
Closed on November 7 Thu.


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