愛しき生き物たち
あと何枚だろうか…と、また落ち葉を掃きながら風にゆらめく葉を見上げた。だいぶ落ちて枝ぶりが良く見えるようになったけれど、赤く紅葉したハナミズキの葉がまだ何十枚かしがみついている。落ちきると、竹箒の出番がぐっと減り楽になる解放感とともに毎年寂しさも感じる。
11月24日(日)まで開催し、お客様に好評をいただいた「NEW TWIST」の展示の併設として、巨匠作品の展示もしておりました。
その中で千家十職の永樂工房で轆轤(ろくろ)職人をしていた父に早くから轆轤の手ほどきを受けており、戦後本格的に陶芸家を志した鈴木治先生の作品をご紹介したいと思います。八木一夫先生や山田光先生と共に「走泥社」を結成し、それまでの陶芸の世界に革新的な新しい風を吹き込みました。
左から 瑠璃 ふくら雀 / 白磁 ふくら雀 / 柿天目 ふくら雀
ちょうど今ぐらいの寒風が吹く季節に、寒さから体を守るために全身の羽毛に空気を入れてふくらませて寒さをしのいでいる、まるまるとした姿に見える雀が「ふくら雀」。当の雀たちは必死に冷たい風から身を守ろうとしているのだが、眺める人間側はその微笑ましい姿から福や繁栄を願う縁起の良い物として、様々な意匠にも用いてきた。着物の帯結びにも名が付いている。何とも愛らしい姿をコロンとしたフォルムに表現している。三色のふくら雀は三兄弟のようで何やら「チュンチュン」と話し合っている鳴き声が聞こえてきそうだ。
瑠璃 ふくら雀
最初に円卓の騎士よろしく、三羽で円を囲むように並んでいたので対等な並びだったが、一列に並べてみた。こうすると白磁の雀が若干大きく、勝手に関係性を決めて怒られるかもしれないが、どことなく長兄ではないかと思えてくる。一羽でも思わず笑みがこぼれるような作品だが、三羽並ぶと殊に愛らしさが募る作品。
影青 魚ノ舟
作品名にあるように尖った先端は舟の舳先のよう。魚は自ら泳がず波を切って進む舟に乗って大海原に出ていくのだろうか。前を向く方向に向かって高くなっているのが波の大きさやこれから向かうまだ見ぬ困難をも乗り越えていくような想像を呼ぶ。青白磁がまるで水をたたえたような瑞々しさで清々しい印象を与える作品。
前から見るとかなり鋭角になっているだけに、荒波をも物ともせず進んでいけるだろう。
舟の後ろから見ると、斜めになった甲板に踏ん張って乗っているようで健気な姿にも映る。
小さな体躯ながら、口をギュッと結んでうろこを立てている姿は勇敢な性質を彷彿とさせ、希望や大志を感じさせる作品である。
鈴木治先生の作品は、こちらからご覧戴けます。
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