【菊池克 作陶展】  ~ 作品紹介 ~

毎年、冬に向かうにつれて、夕暮れ時の空の色や雲の作る模様が美しくなります。段々と温暖化のせいか日本独特の四季の変化が分かりづらく、今年も長すぎる夏から駆け抜けるような秋が過ぎ、冬が目の前に差し迫ってきました。

昨日夜には、また能登半島付近に大きな地震がありました。
年明け直ぐのショッキングな地震から、何度も度重なる災害に、心が苦しくなります。
それに加え、世界各国での戦争も終わることを知りません。また、昨今では、日本の首相交代があったり、アメリカでの次期大統領が決定したりと、国内外を含めて、情勢も様々変化がありそうな気が致します。


さて、今週の金曜日からは毎年個展をお願いしております【菊池克 作陶展】が始まります。
いつも先生のご紹介をする時に、真っ先に出てくるのは、本当に幅広いご交友関係。お一人お一人に、深く丁寧に接しているお姿、一期一会の出会いをすごく大切にされている印象を感じます。
また、先生のInstagramを覗くと、生活の中で、ほんの小さな事柄にも細やかに目を向け、愉しみ、慈しんでいらっしゃるのを強く感じます。常に心穏やかに、平和を願っていらっしゃることも伝わってきます。

「一切衆生悉く(ことごとく)仏性あり国土草木悉く皆成仏す」
とは、お釈迦様が悟りを開かれた時のお言葉だそう。全てのありとあらゆる生き物が仏様の心を持っており、石ころも土くれも草も木もみんな仏様のお姿だということを仰っています。


克先生の作りだす作品の数々は、先生の生活の中から、どんな小さなことにも愛を持って目を向けられることから生まれてきているような気が致します。
また、広い世界へも目を向けられた、幸せや平和への願いが籠った作品が沢山ございます。

今回の個展には、どんな願いが込められた作品が届いたでしょうか。
それでは、会場に並ぶ作品の中から、幾つか作品をご紹介させて戴きます。



【茶道具】

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122:斑茶盌

斑釉が薄く掛かった丸い茶碗。
口縁は緩やかにうねり、それがまた穏やかな表情になっている。
茶碗の一部はやや緋色に色付いて、優しい色合い。
これから花開く蕾のようで、掌の中にそっと包みたくなる。


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124:掛分茶盌

こちらも優しい流れの掛分茶碗。
白い斑釉と飴釉が交わる部分には、淡いブルーが浮かび上がっている。
見込側は細い棒のようなもので抑えて成形されたのか、ランダムに抑えた跡が見えるのも面白い。


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121:柿の蔕茶盌

カサカサと乾いたように焼きあがった柿の蔕。
茶碗下に浮かび上がる細かな轆轤目に続き、キリっと広がる口作りも美しい。
見込みには土の中の大きな砂粒が白く浮かび上がって、面白い景色となる。


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10:粉引香炉
130:粉引聞香炉

最近先生が始められた聞香。
聞香(もんこう)とは、香炉から香りを聞く和の嗜みで、香木の香りを深く味わうのに適したたき方です。香りを嗅ぐのではなく、心を傾けて香りを聞くことで、ゆっくりと心の中で味わうもの。
香りと対話するように心を傾け、少しずつ準備をしながら、自ら香りを聞く心構えを行うのが基本の作法なのだそう。
この香炉もそんな手前の中で使われるのだろうか。





【酒器】

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107:白瓷菊高台盃
126:荷葉片口

克先生ならではの荷葉片口には、白磁の高台が付いた盃あわせて見ました。
裏を返すと、盃の方の高台裏も菊の花のような刻みを付けて作られている。
また、片口の方も蓮の茎に倣って、細かなところまで仕上げているのが嬉しいところ。


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100・101:斑盃
114:無地刷毛目瓶

美しい刷毛目瓶には、それぞれ違うタイプの斑釉の盃を合わせました。
無地刷毛目と言いながら、刷毛目の濃淡や、先生の指跡によって美しい景色が広がっている。
可愛らしい盃も、是非手に取ってご覧戴きたい。


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91:千鳥片口盃
118:鶏龍山徳利

小さな鶏龍山の徳利には上から見ると可愛らしい鳥の形に見える盃を合わせてみました。


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113:緑釉荷盞
115:無地刷毛目瓶

真っ白な刷毛目の瓶には深い緑釉の荷盞を合わせました。
上から見ると不思議な形の荷盞ですが、凹んだところに親指を合わせて持つと自然と掌に馴染んで納まってくれる。
こちらも高台裏の細工が見事に入っている。


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98:無地盃
102:斑盃

ほんのり桃色に色付いた無地盃と、斑の盃。
無地盃は灰が溶けて流れて優しい靄が掛かったよう。
斑釉も薄く掛かることで、土の中に含まれた鉄分が浮かび上がって複雑な表情となる。


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109:鶏龍山盃
111:鶏龍山盃

今回「螺旋」をモチーフとされた作品を多くご出品下さった先生。
本作品も、鉄絵と掻落としで捻じれた螺旋の模様を施している。


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92:粉青獏文盃
96:粉青門文盃
16:粉青獏文盃

今回、動物のバクをモチーフとした作品も多くご出品下さいました。
悪夢を食べるというバクの言い伝え。
こちらの盃にも夢から出てきたような穏やかなバクが描かれています。
また、中央の門文盃は、国東半島に並ぶ神様を祭るお社か何かだろうか。
門の脇には蝶が舞い、優しい空気が漂います。


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110:鶏龍山盃
116:斑徳利

小さな斑徳利には、お髭のような鶏龍山の盃をあわせて……。
斑釉は黄味に発色して味わい深い雰囲気。
所々、焦げたような部分も見えて愉しませてくれる。



【食器】

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125:茶壺

先生の大事なお客様の中に中国茶を嗜まれる方がいらっしゃいます。
小さなこの茶壺は、その方を思い浮かべながら作られたのではないかと……また、先生の想いが伝わってくるような気が致しました。


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59・54・57:掛分皿

届いた作品の梱包を解いて、この作品が出てきてすぐに「月の満ち欠けのような作品だな……」と、うっとりと眺めました。
直径17.5㎝ほど。使いやすい大きさで出番が多くなりそう。


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46・52:これくふて蛇の目皿

これくふて蛇の目皿。
来年は巳年なので蛇の目文様の皿を。

仙厓義梵(せんがいぎぼん)和尚の一円相画賛
賛は「これくふて御茶まいれ」これを食べてからお茶にしよう。
サラリと描かれた円(〇)の横にこの文字が刻まれています。
この円は餅なのか…饅頭なのか…悟りを表す円を食べるとどうなるのだろうか。仙厓ならではの機知に富んだ円相の代表格です。  
[先生のInstagramより]

古い書物や図録なども多く手に取り、心にビビビッと来たものを作品に取り込まれることが多い克先生。
本作品も、蛇の目の「〇」と仙厓義梵和尚の一円相画賛の「〇」を重ねて、愉しんで作られている。
こちらは直径14.5㎝ほど。


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32・33:荷葉皿

毎年沢山ご用意下さる荷葉皿。
瑞々しく、透き通るような蓮の葉が美しく、皆さんじっくりと作品を並べて、お気に入りの一枚を選ばれている姿が印象的です。
大きさは15㎝前後。


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24:荷葉鉢(大)

同手のサイズ違いも含めて、いくつかご用意下さった荷葉鉢。
こちらは口からお尻にかけてが27.5㎝、高さ11㎝の大きなもの。
何だか蓮の葉の陰から可愛らしいメダカさんが顔を覗かせて泳ぎ出しそうな絵が見えてきました。


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67・64・68:粉青湯呑

またスッキリとしたデザインの粉青湯呑。
縞の切替位置や入り方をそれぞれ変えて、スタイリッシュに作られている。





【文具】

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3:獏水滴
80:貘水滴
5:獏水滴

バクの水滴を作りはじめてから霊獣の獏は悪夢だけでなく武器の原料であるカナモノを食べ平和をもたらすと知った。このタイミングは偶然なのか必然なのか?

悪夢と銅鉄を食べるという貘。転じて武器を食べる平和の象徴。

戦争の悪夢と武力による問題解決が少しでも減ることを祈り、今後も貘の水滴を作ります。
②王圻 編纂「三才図会」より。明代。
銅鉄以外は食べない、とある。
③寺島良安 編纂「和漢三才図会」より。江戸中期。    
[先生のInstagramより]

酒器でもご紹介しましたバク。
こちらは水滴になった作品。
背中と鼻に小さな穴が開いた可愛らしい水滴です。
みんなニッコリ笑って、いい子にして皆様をお待ちしております。
どの角度から見ても可愛いので、選ぶ時間も愉しそう。


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DM8:月ノ輪熊水滴
81:白熊水滴

白熊水滴。
白熊はかなしからずや 雪の上
氷の上にも凍てずただよふ    
[先生のInstagramより]

こちらはバクの水滴に並んでクマさんの水滴。
週替わりでシロクマが店頭に並ぶとは、我々もびっくりですが、こちらは手に取れるサイズです。


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90:螺旋筆架
82:青磁牛涎透文筆筒

こちらも盃の所で出てきた「螺旋」がモチーフになった筆架と、ねじり繋がりで牛涎透文筆筒を並べてみました。
螺旋筆架は、巻貝が波に削られ残された芯の部分のような、面白い形。


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DM23:粉青瓢形水滴
74:豆大福水滴

瓢。 瓢。
汝 瓜の類にいて包丁の難にあはざるは智也
大徳寺435世管長 大綱宗彦和尚の瓢絵の賛より。
敵意を抱かせず関心も惹かず、相手も自分も生きる。そんな智慧を瓢と大綱和尚の慧眼に学びました。    
[先生のInstagramより]

こちらも先生が新たに学ばれたことからインスピレーションを受けてお作りになった瓢形水滴。
隣には可愛らしくぽってりとした豆大福の水滴。
こちらは同じような心和む豆大福の盒子のご用意もございます。


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182・191・184:菩薩手

こちらも先生が長年取り組まれている菩薩手のシリーズ。
年々と作りが細やかに洗練されてきて、迎え入れるのが愉しみになってくる。





【花入】

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73:掛分花入

立派な耳付の花入。
大きく削って段差を付けて胴を作っている。
正面には櫛目を使って古い枯れ木のような模様が入り、哀愁ある佇まい。
微かに口元に掛分の色が入る。



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72:掛分扁壺

こちらも同じ掛分という手法ではあるものの、全く違う雰囲気。
ふっくらとした扁壷の形に黒釉と飴釉が施されている。
飴釉の下には、粗い刷毛目の技が入り、目を愉しませてくれる。



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134:螺旋掛花入

繞道(にょうどう)。
仏教で敬意を表する尊者や仏像、ものの周りをぐるぐる時計回りに回ることを右繞(うにょう)と言い、その道筋を繞道(にょうどう)という。
右繞を三回行うことを「右繞三匝(さんぞう)」というそうで、その語源は拙窯の名前でもある摩訶迦葉がお釈迦さまが涅槃に入った際にその回りを三回周った事に由来する。                          
[先生のInstagramより]

こちらも巻貝の芯の部分のような面白い螺旋の掛花入。
先生の様々な願いが込められた作品。





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螺旋シリーズ






幅広い分野に興味を持っていらっしゃる先生は、とっても博学。
今の時代に忘れさられてしまいそうな言葉や言い伝えのようなものまで取り込んで、愉しく作陶されています。
そんな先生の喜びと、願いが詰まった作品の数々を、どうぞ愉しみに、ご来苑下さいませ。






(葉)



 【菊池克 作陶展】 
Exhibition of KIKUCHI Katsu
開催期間:2024年11月29日(金) ~ 2024年12月3日(火)
Exhibition : November 29 to December 3, 2024




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獏水滴



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