【ひとりたのしむ 昭和巨匠陶藝逸品展】 2週目 ~ 作品紹介 ~

いよいよ2024年も1週間を切りました。
我が家のご近所では、「雪中花(せっちゅうか)」とも呼ばれる水仙が、早くも花を咲かせ始めました。厳しい寒さの中、陽の光に眩く輝きながら風に揺れる姿は、何とも美しいものです。

さて、先週の金曜日から始まりました【ひとりたのしむ 昭和巨匠陶藝逸品展】は28日(土)までの開催となります。

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追加作品を交えて並ぶそれぞれの姿は、そんな自然界の草花のように尊く、静かな輝きを放つようです。




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濱田庄司 / HAMADA Shoji
No.26 赤繪茶盌 / Tea bowl, Overglaze enamels
共箱・琉球窯 / With a box signed by the artist(Ryukyuyo Kiln)
13.4 / H6.1cm

『京都で道を見つけ、英国で始まり、沖縄で学び、益子で育った。』自らをそう語る濱田先生。
民藝運動に深く関わり、「用の美」の世界で作陶された先生にとって、同じく生活に根差した沖縄の民窯は共鳴するものがあったのでしょうか。

チョコレート色の独特な素地に化粧土を施し、深みのある赤絵と緑釉によって自由に屈託なく三角形の模様が描き出されている。

ほのかな黄味を帯びている透明釉は、どこか懐かしさを彷彿とさせる趣を感じる。
珊瑚礁由来の石灰ともみ殻を焼いて臼で挽いたものに、具志頭白土という長石の代替を配合することによって出来た透明釉は素朴ながら、力強さを感じさせる。

口縁の鉄釉の滲みもまた味わい深い。


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岡部嶺男 / OKABE Mineo
No.14 紅志野盃 / Sake cup, Beni-shino
共箱 / With a box signed by the artist
7.0 / 6.7 / H5.5cm

口広がりの素地の上からは厚みを持って施釉され、ふくよかな釉肌となっている。
嶺男先生のお使いになった志野釉の長石は、耐火度の強い長石を用いることにより中から滲み出るような発色をもたらす。
釉下から見える鉄絵の深み、濃淡をつけて出た薄橙色をじっくりと味わいたくなる。

ふっくらとした器体に対し、キリッとエッジの利いた高台造りも魅力的。
高台内に「嶺」のくずしの彫銘が入る。

1960年代後半から青瓷研究に力を入れていく中で、桃山陶の制作は途絶えていく。本作品は昭和40年頃制作の作品で、桃山陶制作の末期のものと思われる。



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塚本快示 / TSUKAMOTO Kaiji
No.4 白磁花生 / Flower vase, White porcelain
共箱 / With a box signed by the artist
15.0 / H27.8cm
売約済 / Sold

シンプルでありながら、釉下から穏やかな轆轤目を感じる肩に丸味を帯びた胴に続き、細く短い首からぽってりとした口元が愛らしい花生。

昭和初期、日本がまだ混沌としていた時代に、中国陶磁の最高峰と言われる青白磁、白磁と出会い感銘を受けたことをきっかけに、「中国の高層階級のものとされる青白磁、白磁を日本の一般家庭にも広く届けたい」との思いから自らの手で生み出そうと研究に没頭された。
入手した陶片を肌身離さず持ち歩き、試作を重ねて少しずつ材料や焼成の手掛かりを見つけ、その製法を導き出していったという。
1983年には青白磁、白磁の技術保存作家として重要無形文化財に認定された。

その甘く柔らかな立ち姿は、凛として気高く、心にそっと寄り添ってくれる優しさが備わっている。



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三輪休和 / MIWA Kyuwa
No.21 萩酒盃 / Sake cup, Hagi
共箱 / With a box signed by the artist
6.8 / 6.4 / H4.7cm

15世紀に毛利氏が高麗茶碗を国内で作ろうと、朝鮮より渡来した陶工をもって御用窯を築いたのが始まりとされている萩焼。
その中でも三輪家は京の楽一入と交流を図り、四代休雪など修業のため京都へ上るなど高麗茶碗の写しに留まらない今日の萩焼の礎を築いてきた。しかし明治期に入ると廃藩によって御用窯としての立場を失い、苦境に立たされてしまった。
そのような中で休和先生は萩焼の元となる高麗茶碗を徹底的に研究し、従来の萩にとらわれない高い造形力のある作品を創り出され、六古窯などと比して歴史が浅いともいえた萩焼を全国的な地位にまで高められた。

本作品は砂礫に釉が絡み随所に縮れが見られ豊かな景色となる。
穏やかな枇杷色の器体には薄っすらと白萩釉が掛かかり、所々雨のベールを纏ったような釉垂れが見られる。
その佇まいには品があり、大切に育てたくなる。
丁寧に作られた三日月高台の脇に「和」の彫銘が入る。





大変な災害から始まった2024年ですが、少しでも穏やかな気持ちで、また次の新年を迎えられたらと思うばかりです。

巨匠の先生方に、温かく見守られながら本年最後の展示を締めくくります。
会期は28日(土)までとなっております。

お忙しい時期かと存じますが、ご高覧戴けましたら幸いでございます。



(葉)



【ひとりたのしむ 昭和巨匠陶藝逸品展】
the Grand Masters of Showa Era
開催期間:2024年12月20日(金) ~ 2024年12月28日(土)
Exhibition : December 20 to December 28, 2024
休業日:12月26日(木)


当苑では年に二回行っております、巨匠作家の逸品を展示する『ひとりたのしむ 昭和巨匠陶藝逸品展』。現在の陶芸界の礎を作られた昭和陶芸の巨匠たちの逸品は、さらに輝きを増して我々を楽しませてくれます。少数ですが他では見られない素晴らしい作品を今回もご用意致しました。是非ご来苑下さいませ。


【出品作家】
荒川豊藏、岡部嶺男、北大路魯山人、黒田辰秋、川喜田半泥子、小森松菴、塚本快示、中里無庵、バーナード・リーチ、三好木屑、三輪休和、八木一夫(敬称略)



 京橋 魯卿あん 
 Rokeian 
〒104-0031 中央区京橋2-9-9
TEL: 03-6228-7704 FAX: 03-6228-7704
http://www.kurodatoen.co.jp/rokeian/
営業時間:11:00~18:00 定休日:日曜日・祝日

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